誰もが楽しめるファッションとは?視覚障害者とファッション

「誰もが楽しめるファッション」

目にする機会が増えたことを、率直に嬉しく感じる一方で、当事者の方と近い距離で接しているからこそ、改めて感じることもある。
あくまで一個人として、今感じていることを書いておきたい。

「誰もが楽しめるファッション」とは何か。
自分自身、この考え方を大切にして活動しているからこそ、今感じていることを一度言葉にしてみたいと思った。

インクルーシブという言葉を耳にする機会は増えているが、十分に理解されているかというと、まだ難しい部分もあるように思う。
だからこそ、こうした取り組みが増えていることには、大きな意味があると感じている。

選択肢が増えることや、誰かが取り残されないように考えられていることは、とても前向きな変化だと思う。

ただ、その“配慮”は、本当に当事者の感覚に合っているのだろうか、と思うこともある。

言葉が先行して、つくる側の視点に寄ってしまっていないか。
当事者を置き去りにしていないだろうか、とあえて問い直してみることも、よりインクルーシブにつながっていくのかもしれない。

そもそも、視覚障害者といっても状況は一つではない。
生まれつき見えない人もいれば、途中で見えなくなった人もいる。
これまでどんな情報や環境に触れてきたかによっても、大きく異なるように思う。
前提として持っている情報や感覚が違う以上、「視覚障害者向け」とひとくくりにすることに違和感が残ることもある。

実際に接している中で感じるのは、特別なことを求めているわけではない、ということだ。
多くの人が「特別になりたい」というより、「社会に自然に溶け込みたい」と話す。
街の人がどんな服を着ているのかを知りたい。
その中から、同じように選びたいという感覚に近い。

見て判断することが難しいからこそ、「似合う」を知りたいという声は多い。
そのときに求められているのは、「お似合いです」といった曖昧な言葉ではなく、なぜそうなのかという説明だと感じる場面が多い。

また、「目が見えないだけで、それ以外は変わらない」と話す人もいる。
そう考えると、特別な服や特別な売り場を用意することが、本当に必要なのかは、改めて考えたくなる。

新しい服をつくること自体は意味のある取り組みだと思う。
身体的な理由で特別な設計が必要なケースに対しては、丁寧に寄り添った開発が不可欠だとも思う。

ただ、こうした取り組みを視覚障害者のファッションに当てはめてみると、デザインが特別な方向に寄ることで価格が上がったり、機能を優先するあまりファッションとしての魅力が弱くなってしまうこともある。

それは配慮の結果ではあるが、「選びたい」という気持ちとは少し方向が違ってしまうこともあるのではないか、と感じる。

視覚障害に関しては、多くの場合、問題は「服」そのものではなく、「情報」と「選び方」にあるのではないか。
そんなふうに考えることがある。

色や形、素材といった情報がきちんと伝わり、自分に合うものを選べるようになれば、特別な服がなくても成立する場面は多いのではないか。

そう考えると、本当に必要なのは、特別な服そのものよりも、選ぶための情報と、それを支える関わり方なのではないかと思う。

だからこそ、こうした商品や売り場の工夫に加えて、店頭での接客スキルに目を向けた取り組みが広がると、さらに良い状態に近づくのではないかとも感じている。

視覚障害のある方にとって、店舗に足を運ぶこと自体がハードルになる場面も少なくない。
見えないことによる不安や、どう関わられるのか分からない状況が重なると、「行ってみよう」という気持ちを持ちにくくなることもある。

だからこそ、特別な場を用意することだけではなく、今ある店舗の中で安心して関われる状態をつくることも大切なのではないかと思う。

そうした意味でも、店頭での関わり方は大きな要素になると感じている。

例えば、色や形、素材などを、聞いた人が同じようにイメージできるように伝えること。
その人が何を求めているのかを、きちんと引き出すこと。
そうした関わりを積極的に持つことも、大切なのではないかと思う。

さらに、説明だけで終わらず、その人に似合わせるならどう選ぶといいのか。
そこまで踏み込めるかどうか。

ただ情報を伝えるのではなく、「自分で選べる状態」をつくる関わり方が求められているのではないか。

こうした関わりが増えていくことで、今ある服の中からでも選べる状態はつくれるのではないか、と感じている。

「誰もが楽しめるファッション」とは、特別なものを用意することだけではなく、それぞれが自分で選び、納得して身につけられる状態をつくることなのかもしれない。

現場で接する中で、少しずつそんなふうに考えるようになってきている。

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活動について

見え方に関係なく、自分で選べる状態をつくるために、視覚情報を言葉や触覚で整理しながらファッションサポートを行っています。

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